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ニュース「東京新橋で二酸化炭素消火設備が誤作動、作業員2人が死亡」

更新日:2021年2月5日


東京新橋二酸化炭素消火設備事故

(公開 2021/02/04)


参考記事:共同通信「ビル地下駐車場で作業員2人死亡」

(最終アクセス:2021/01/25)


 1. サマリー

2021年1月23日、東京都港区にあるオフィスビルで二酸化炭素消化設備が誤作動し、男性2名が死亡する事故が発生した。二酸化炭素消火設備は機械に損傷を与えず消火できる有用な消防設備である反面、人体への危険性も甚だ大きい。消防設備点検を生業とする現場作業者は勿論のこと、建物の維持管理に対して最終的な責任を持つ建物の関係者も、同種事故防止のために細心の注意と責任の重さを再確認していただきたい。


 2. 目次


 3. コンテンツ

# 事故概要

2021年1月23日、午前11時ごろ、東京都港区西新橋にあるオフィスビルの地下1階駐車場で二酸化炭素消化設備が誤作動し、男性2名が死亡した。当日は同施設の消防設備の点検中であり、死亡した男性はいずれも点検作業員。警視庁愛宕署によると、死亡した男性は二酸化炭素中毒になった可能性があるとしている。誤作動の原因については、作業員が誤って噴出させてしまったとの報道もあるが、詳細は不明。


二酸化炭素消火設備による事故は直近1ヶ月で2度目となる。前回は2020年12月末、名古屋市のホテルで同種事故が発生し、その際は作業員1名の人命が奪われた。その事故についてはコンテンツ「名古屋市内のホテルで二酸化炭素消火設備の事故により1名が死亡」を参照していただきたい。同コンテンツ内でも触れたことではあるが、消防法は何らかの事故が発生した後に、規制を厳格化し事故を防ぐための改正がされる傾向が強い。また、同じ事故が立て続けに起きたことで、行政は消防設備の点検及び管理状況のチェックに動き出すと考えられるため、消防設備を備えた建物の維持管理を行う業者並びにオーナー等の最終責任者は、二酸化炭素消火設備の維持管理状況を見直す必要があるだろう。


# 二酸化炭素の危険性について

今回の事故を受け、経済産業省は『二酸化炭素等消火設備による事故防止について』という注意喚起文を発表した。内容は、今回の事故について触れた上で、点検業者等に対し注意を促すものとなっており、現在のところ経済産業省が大きく動いている情報はない。消防設備の事故なのになぜ消防を管轄する総務省ではなく経済産業省なのかという疑問を抱く方もおられるだろうが、理由は二酸化炭素消火設備が、高圧ガスを使用するもので、高圧ガスを管轄するのが経済産業省だからである。二酸化炭素消火設備は大型ボンベ内に圧力を加えた二酸化炭素を保存し、主に窒息効果を用いて火炎を消す消防設備である。同設備は高圧ガス保安法における高圧ガスの貯蔵と消費の規制を受けるため、事故は高圧ガスの事故として取り扱われることになるのである。二酸化炭素による窒息消火は消火区域にある機械に対しダメージを与えにくいという有用な効果があるものの、人間に対してはその窒息効果から危険物質となりうる側面を持つ。二酸化炭素消火設備は高性能な消火能力と人体への危険性を併せ持った諸刃の剣なのである。その危険性から、高圧ガス保安法では他のボンベと区別するために容器を緑色にする旨が規定されている(容器保安規則第10条)。


# 同種事故防止のために

消防設備に携わる身としては、細心の注意を払って作業するのは勿論のことであるが、何よりも逃げ道を確保して作業に当たることであろう。二酸化炭素消火設備はその特徴から、機械室や駐車場など、精密機器が置かれている場所に設置されることが多い。必然的に屋内の閉鎖空間で使用される率も高くなるため、出入り口や避難経路を念頭に入れた上で作業に当たることが肝要である。一方、建物のオーナーや防火管理者は消防設備の点検分野を業者に丸投げするのではなく、危険物質を管理している自覚をもって施設管理を行うべきであろう。機械室や防災センターに荷物を存置する例はまま見られるが、二酸化炭素消火設備が誤作動した際に、人が効率的に逃げられないような状況を作ると同種事故が続くことにもなりかねない。また、同種事故は建物やテナントの信用問題にも直結する。消防設備の点検は業者が行うとしても、建物の最終的な責任者はオーナー等に帰属することから、建物の管理監督責任を持つ関係者は改めてその責任について考えていただきたい。


参考:

経済産業省『二酸化炭素等消火設備による事故防止について(注意喚起)』

(最終アクセス:2021/02/03)


関連:

「名古屋市内のホテルで二酸化炭素消火設備の事故により1名が死亡」

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