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令和3年度介護報酬改定解説~感染症対策・業務継続・災害対応について


令和3年度介護報酬改定

(公開 2021/09/03)

 1. サマリー

令和3年度の介護報酬改定では、感染症対策の強化、業務継続に向けた取組の強化、災害への対応力強化が重視されている。それぞれについて具体的な評価基準・留意点等を解説する。制度上明確に感染症・災害対策およびBCP対応の重要性を示した今回の介護報酬改定を踏まえて、今後の介護報酬改定や介護施設におけるBCP・災害対策を巡る問題により一層注目する必要がある。


 2. 目次


 3. コンテンツ

# はじめに

高齢化の進行や新型コロナウイルスの蔓延が憂慮される中、介護報酬改定もそのような世相を色濃く反映した内容となった。今回は、令和3年度介護報酬改定について、特に感染症対策およびBCPに焦点を絞って解説する。

令和3年度の介護報酬改定においては、感染症や災害発生時などの有事の際にも利用者に必要なサービスを安定的・継続的に提供できる体制を構築することが重要事項とされた。 具体的には、以下の内容が盛り込まれた。

  1. 感染症対策の強化

  2. 業務継続に向けた取組の強化

  3. 災害への対応力強化

  4. 報酬の見直し

以下、それぞれについて解説する。 ※対象となるサービスを【】内に記載する。



# 感染症への対応力強化

  • 現行の施設系サービス事業者内の委員会の開催、指針の整備、研修の実施等に加え、訓練(シミュレーション)の実施を義務付ける。【施設系サービス】

  • 新たにその他の事業者による委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務付ける。【その他のサービス】 ※3年の経過措置期間あり。

⇒この感染症対策に関する取り組みについて、厚生労働省は「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン(以下、感染症ガイドライン)」(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000817384.pdf )を指針として提示している。 感染症ガイドラインによると、

  • 介護サービス事業者には、感染症発生時であっても①サービスの継続②利用者の安全確保③職員の安全確保が求められる。

  • 感染症の場合、基本的に影響が長期化すると考えられるが、不確実性が高く影響予測が困難なため、情報を定期的に入手しその都度判断をすることが求められる。

  • 感染リスク、社会的責任、経営面を勘案し、 事業継続のレベルを決めることが重要である。

  • 被害量は感染防止策により左右されるので、感染症防止策の具体化・徹底が重要である。



# 業務継続に向けた取組の強化

  • 業務継続に向けた計画(BCP)等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション) の実施等を義務づける。【全サービス】 ※3年の経過措置期間あり。

⇒この業務継続に関する取り組みについて、厚生労働省は感染症ガイドラインを指針として提示している。 感染症ガイドラインによると、

  • BCP作成時に考慮すべきポイントは主に以下の通り。

①関係者との情報共有と役割分担をスムーズに行うための体制構築 ②感染者が発生した際の対応の整理、シミュレーション ③必要な人数の職員確保 ④業務の優先順位の整理 ⑤計画の周知、研修、訓練


介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続

【画像:厚生労働省「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」】


# 災害への対応力強化

  • 訓練の実施に当たって、地域住民の参加が得られるよう連携に努めなければならない。 【通所系サービス、短期入所系サービス、特定、施設系サービス】

⇒厚生労働省は、「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン(以下、災害ガイドライン)」(https://www.mhlw.go.jp/content/000749543.pdf )を発表している。 当ガイドラインによると、

  • 近隣の法人と協力関係を構築する、所属している団体を通じて協力関係を整備する、自治体を通じて地域での協力体制を構築する等、平常時から他施設・他法人と協力関係を築くことが大切である。また、単に協定書を結ぶだけではなく、普段から良好な関係を作るよう工夫することも求められる。

  • 地域との連携に関する協議が整えば、その証として連携協定書を締結するのが効果的である。項目例は以下の通り。  先方施設、事業所名、種別、所在地など これまでの協議の経緯 決定して いる事項 今後検討すべき事項 今後のスケジュール など

  • 施設・事業所の倒壊や多数の職員の被災等、単独での事業継続が困難な事態を想定して、施設・事業所を取り巻 く関係各位と協力関係を日ごろから構築しておく。地域で相互に支援しあうネットワークが構築されている場合は、それらに加入することを検討する。

  • 相互に連携し支援しあえるように検討した事項や今後準備すべき事項、入所者・利用者情報の整理、共同訓練について定める必要がある。

# 報酬の見直し

  • 通所介護等の報酬について、感染症や災害の影響により利用者数が減少した場合に、状況に即した安定的なサービス 提供を可能とする観点から、以下の見直しを行う。【通所介護、通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護】

  • より小さい規模区分がある大規模型について、事業所規模別の報酬区分の決定にあたり、前年度の平均延べ利用者数ではなく、延べ利用者数の減が生じた月の実績を基礎とすることができる。

  • 延べ利用者数の減が生じた月の実績が前年度の平均延べ利用者数から5%以上減少している場合、3か月間、 基本報酬の3%の加算を行う。

  • 現下の新型コロナウイルス感染症の影響による前年度の平均延べ利用者数等から5%以上の利用者減に対する適用にあたっては、年度当初から即時的に対応を行う。


令和3年度介護報酬改定の主な事項

【画像:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」】


# むすび

以上のように、新型コロナウイルスの流行を契機として、老人福祉施設における災害対策・BCP対応が今回の介護報酬改定を通して制度上明確に要求されるようになった。これらのポイントには、コロナ対応だけでなく水害・地震などその他災害への対応も含まれている。足元の経過措置があるものの、今後もこの要請が強化されていくことは必至と考えられ、各事業者はその点を踏まえた対応を心がけねばならなくなる。

今後の介護報酬改定、介護施設におけるBCP・災害対策を巡る問題により一層注目する必要がある。


参考:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000753776.pdf)



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