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粉末消火設備概要


粉末消火設備

(公開 2021/02/11)

 1. サマリー

粉末消火設備とは、粉末消火薬剤を大量に放射し、火炎を鎮圧する消防用設備の一つである。粉末消火設備は大型で高価なものが多い反面、その消火効果と設置後の運用コストが低い点に定評がある。大型故に点検は大掛かりになるが、手順を守って一つ一つ丁寧に点検することで、点検の不備や事故を防ぐことが可能である。


 2. 目次


 3. コンテンツ

# 粉末消火設備とは

粉末消火設備とは、粉末消火薬剤を大量に放射し、火炎を鎮圧する消防用設備の一つである。燃焼面を覆うことによる窒息効果と、化学作用によって燃焼の連鎖反応を遮断する抑制効果等により、高い消火力を発揮する。普段良く見る消火器が大型化したものだというイメージをもってもらえればわかりやすい。消火薬剤は大別すると4種あり、それぞれ得意な消火分野が異なっているため、設置場所に合わせた薬剤の選択が必要となる。また、消火設備本体は大きく分けると「固定式」と「移動式」の2種類がある。固定式は薬剤の入った大きなタンクと、それを噴出するための加圧用ボンベや天井等に張り巡らされた配管等から構成される。見た目はスプリンクラーと良く似ており、水ではなく消火薬剤が噴出すると思っていただければ間違いはない。一方、移動式はまさに消火器を大型化したような形をしていて、一般的には赤いケースにボンベ、ホース及びノズルがセットになって入っている。設置場所として、工場や格納庫、危険物施設、駐車場などに設置されていることが多い。お値段は、移動式のものでだいたい350,000円〜と安くはない。固定式を設置するには、本体価格もさることながら、配管、専用電源、起動装置、警報装置、放出表示灯、区画遮断用の防火シャッターとの連動など、ありとあらゆるコストが必要になる。とは言え、その消火効果は先述のとおり、また、一度設置してしまえば殆ど交換する必要はないというのもメリットとして挙げられるだろう。

固定式粉末消火設備

【固定式粉末消火設備:初田製作所】


移動式粉末消火設備

【移動式粉末消火設備:初田製作所】


# 固定式粉末消火設備の仕組み

それでは、固定式の粉末消火設備がどのような仕組みで動いているのかを解説する。説明にあたって、下記図を参照していただきたい。

固定式粉末消火設備系統図

【引用:モリタ宮田工業】


まず、建物天井付近に設置された感知器が火災を感知するか、随所に設置された手動起動装置により、制御盤が作動し、避難を促す警報が流れる。施設内に人間が残っていると危険なので、起動してから実際に粉末消火薬剤を散布するまでには時間がある。また、同じタイミングで火点周囲の防火シャッターが閉鎖し始める。これは、散布した消火薬剤を火点室に閉じ込め、消火効率を上げるための措置である。手動起動装置にカウントダウン表示が付いているものでは、それがゼロになった時が人の避難と防火シャッターの閉鎖が完了し、消化する準備が整ったと見なされるタイミングである。そうなると、粉末消火薬剤を貯蔵しているタンクに加圧用の窒素ガスが注入され、高圧ガスと消火薬剤が配管の間を流れ、噴射ヘッドから放出される、というのが固定式粉末消火設備が作動する一連の仕組みである。


# 点検のポイント

粉末消火設備の点検項目を漏れなく記載すると非常に長くなるため、ここではポイントを絞って解説する。


①点検時に操作した箇所には印をつける

粉末消火設備に限った話ではないが、大型で広い範囲に及ぶ設備を点検する際には、必ず操作した場所に印を付けるのを忘れてはいけない。点検では、音響装置の遮断や、各種弁、導管の離脱など、多くの操作箇所が存在する。点検終了後、印がないとどこを点検したのか一々探すこととなり、作業効率が落ちる。また、最悪の場合には点検状態で作業を終了してしまい、有事の際に使用できなかったという事態にもなりかねない。当方では作業箇所にテープを貼ることにしている。点検終了後は、テープのある場所を元通りにし、テープを剥がして終了となる。


②加圧用ガスの導管を離脱する

これをしないとどうなるかと言うと、もし何らかのミスや誤作動で粉末消火設備が作動してしまった場合、室内に加圧用ガスと消火薬剤が散布されることになる。そうならないために、予め導管を離脱しておくのである。これにより、万が一にもクライアントの施設や人員に損害を与えるという最悪の事態は回避できる。余談ではあるが、近頃二酸化炭素消火設備が誤作動し、作業員の命が奪われる事故が続いている。二酸化炭素消火設備でも、このように導管を離脱すれば同種事故は防げるはずである。点検者はこの点は肝に命じていただきたい。


③配管の目視点検を必ず行う

工場等の天井には様々な配管が所狭しと並んでいる。その中から粉末消火設備用の配管を見つけ、壁から噴射ヘッドに至るまで、異常はないかをしっかりと目視確認する。なぜなら、配管の数が多い場所では、他の業者により配管に操作が加えられている場合があるからである。粉末消火設備では、粉末消火薬剤を噴射ヘッドにしっかりと届かせるため、配管の分岐や形状の規定が存在する。これに異常がないかをしっかりと点検しなければならない。面倒だが、意外と知らぬ間に手が加えられている時があるため注意が必要である。

他にも注意しなければならない点は山程あるが、ふとすると忘れてしまうが実は非常に重要な点をピックアップして挙げた。何かの参考になれば幸いである。



参考:

モリタ宮田工業「粉末消火設備」


関連:

コンテンツ「消防用設備とは」


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