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防火管理について


(公開 2021/07/12)

 1. サマリー

火災対策において必須の防火管理について、その定義および要件について確認する。防火管理とは火災の際に被害を最小限に留めるために必要な対策の策定、実行のことを指す。また防火管理の要件としては、防火管理者の選任・消防計画の策定・防火防災教育の実施・消防訓練の実施がある。


 2. 目次


 3. コンテンツ

# はじめに

介護施設管理・運営においてBCPの注目度が高まる中で、同様に火災対策の重要性が増しているのは言うまでもない。今回は、火災対策において必ず考慮しなければならない防火管理について見ていく。具体的には、防火管理・防火管理の要件について確認する。


# 防火管理とは

防火管理は、東京消防庁のHP(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/jissen/p01.html)によると、「『防火管理』とは、火災の発生を防止し、かつ、万一火災が発生した場合でも、その被害を最小限にとどめるため、必要な対策を立て、実行すること」とされている。

同HPによると、「自らの生命、身体、財産は自らが守る」ことが防火管理の原則であり、各事業体・団体等が率先して防火のために対策を検討・実施することが重要視されている。


# 防火管理の要件

防火管理を法令上の義務として定めているのが、消防法第8条及び火災予防条例第55条の3である。消防法では、以下、どのような要件があるのかについて解説する。


① 防火管理者

消防法第8条では、「防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め」なくてはならないと定めている。

防火管理者に選任されるための要件は、以下の通りである。

  1. 防火管理業務を適切に遂行することができる「管理的、監督的地位」にあること

  2. 防火管理上必要な「知識・技能」を有していること

2.の「知識・技能」の要件については、学識経験者等を除き、一般的には「防火管理講習」の課程を修了することにより得られることが多いようである。 また、以下に該当する者は必要な「知識・技能」があると認められ、防火管理講習を受講する必要がない。

  • 市町村の消防職員で管理的又は監督的な職に1年以上あった者

  • 労働安全衛生法第11条第1項に規定する安全管理者として選任された者

  • 防火対象物点検資格者講習を修了し、免状の交付を受けている者

  • 危険物保安監督者として選任された者で、甲種危険物取扱者免状の交付を受けている者

  • 鉱山保安法第22条第3項の規定により保安管理者又は保安統括者として選任された者

  • 国若しくは都道府県の消防の事務に従事する職員で、1年以上管理的又は監督的な職にあった者

  • 警察官又はこれに準ずる警察職員で、3年以上管理的又は監督的な職にあった者

  • 建築主事又は一級建築士の資格を有する者で、1年以上防火管理の実務経験を有する者

  • 市町村の消防団員で、3年以上管理的又は監督的な職にあった者

管理権原者が防火管理者を選任した際は、管轄の消防署へ「防火防災管理者選任届出書」を提出しなければならない。


② 消防計画

防火管理において作成すべき消防計画に盛り込むよう法令で定められた項目は以下のとおりである。 ※各自治体で異なる場合がある。

  1. 消防計画の適用範囲 消防計画の根拠法令や消防計画に定めた事項がその事業所に勤務等するすべての人に適用されることを明示する。

  2. 管理権原者及び防火管理者の業務と権限 管理権原者・防火管理者の責任・権限を明確にする。

  3. 管理権原の及ぶ範囲 管理権原が分かれている防火対象物については、管理権原の及ぶ範囲を文章や平面図等により明確にする。

  4. 火気の使用又は取扱いの監督 出火危険を把握し、火元責任者等を組織・出火防止業務や対策を定める。

  5. 放火防止対策 地域特性や周辺の火災状況を踏まえ、放火防止対策について定める。

  6. 避難施設の維持管理 避難口、廊下、階段などの避難施設が有効に機能するよう管理方法を定める。

  7. 収容人員の適正管理 用途、規模に応じた収容能力を把握し、収容人員を適正に管理する。

  8. 防火・防災教育 防火管理者が実施担当者、実施時期を判断し計画的に防火・防災教育を行う。

  9. 自衛消防活動 災害発生時の人的・物的被害を最小限にするための行動要領等の対策を立て、万一の場合に適切な措置がとれるように備える。

  10. 自主点検 火災等の災害の発生を未然に防止するために、防火管理者等が自ら行う自主検査・点検について定める。具体的には、検査項目の設定・自主検査・不備事項改修および結果報告・検査項目の見直しを行う。

  11. 消防用設備等の点検・整備 消防用設備等の法定点検や自主点検について定める。一定規模の建物の法定点検及び整備には、資格が必要となる場合がある。

  12. 防火上の構造の維持管理 防火戸、防火シャッター等の設備等が、有効に機能するような管理方法を定める。

  13. 工事中の安全対策 工事を行う際の防火安全対策を定める。

  14. 外部委託 防火管理業務の一部を第三者に委託する場合、委託業務の範囲・方法、業務管理方法等について定める。

  15. 自衛消防訓練の定期的な実施 火災、地震などが発生した場合の初期消火、通報連絡、避難誘導、救出・救護、消防隊への情報提供その他の自衛消防活動を効果的に行うための訓練について定める。

  16. 地震、大雨等の発生時の自衛消防対策 地震、大雨、強風等に伴う災害(風水害)、大規模テロ等に伴う災害、防火対象物内での受傷事故等が発生した場合の対策を定める。

  17. 営業時間外の防火管理体制 通常時とは別に計画を立て、任務を定める。

  18. 消防機関との連絡等 法令に定める各種届出等に関し、届出種別、届出時期などを記載する。

③ 防火防災教育

防火管理の趣旨上、策定した消防計画に則って防火防災教育を継続的に行うことが重要視されている。

防火防災教育に盛り込むべき内容は以下のとおりである。

  • 従業者が守るべき事項(避難施設等の維持管理、下記管理、防火防止対策等)

  • 火災時の各自の任務(119番通報、初期消火、避難誘導、応急救護等)

  • 震災対策(救助・救護資材の取り扱い、安否確認方法、一斉帰宅の抑制等)

④ 消防訓練

非常事態でも実効性のある訓練を実施するために事業所等の実態にあった訓練想定を策定する必要がある。たとえば建物に実際に設置されている消防用設備等を使用する、職員の少ない時間帯を想定して実施するなどである。


# おわりに

以上では、防火管理とその要件について概括したが、ここではあくまで総括的なものをとりあげている。実際は建物の種別や使用用途などによって消防計画や訓練の実施義務などが大きく異なっているので、自身の事業所に必要な要件を管轄の自治体・消防署のHP等で確認することをおすすめする。




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