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防火(防災)管理者を外部委託するには?


消火設備の点検

(公開 2022/11/21)


 1. サマリー

建物を管理するオーナーや事業主による防火(防災)管理の適切な業務遂行が困難であると消防署長等が認めれば当該管理者を外部に委託することができる。委託の可能な建物やその利点などについて解説する。


図:外部委託のイメージ

(画像引用:株式会社メルすみごこち事務所 https://e-chintaiowner.com/bouka/


 2. 目次


 3. コンテンツ

# はじめに

防火(防災)管理の原則は自主管理である。管理権原者(建物のオーナーや賃借人(事業主)等)は防火(防災)管理上の最終責任者であり、自己の建物は自らが守るという防火(防災)管理の本旨に基づいて法律や契約又は慣習上、本人が行うべきである。その責務として従業員等の中から防火(防災)管理者を選任・解任し、届出をする必要がある。

だが、管理権原者にも諸々事情があり従業員等の中から防火(防災)管理者を選任することが難しければつい放置したくなるだろう。

とはいえ、防火(防災)管理者が未選任の場合、管理権原者は消防署長等から選任するよう命じられ(消防法(以下、「法」)第8条第3項)、違反すれば、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する(法第42条第1号)との罰則もある。

そこで、従業員等の中からの選任が困難な場合、条件を満たせば防火(防災)管理者を外部委託することができると解釈できる規定(消防法施行令第3条第2項)があり実務上の必要から事実、外部委託が行われている。


消防法:

消防法施行令:


# 防火(防災)管理者とは

一般的には「防火管理者」で通っているところ本稿では「防火(防災)管理者」とし、「防火」と「防災」を併記しているのには意味がある。まずは防火管理者と防災管理者の違いを説明する。


・防火管理者とは

防火管理とは火災の予防、火災発生の際の被害を軽減するべく必要な措置を講じることである。防火管理者とは防火管理制度(消防法第8条第1項)に基づき、管理権原者から選任されて防火管理の業務を行い、防火管理業務を推進する責任者として必要な知識などを備えた管理的・監督的な地位にある者である。

防火管理者の資格要件は、特定の講習を修了するか、相応の学識・経験を有すると認められる者である。資格区分は防火対象物の規模により分かれる。

防火管理者が必要な防火対象物で、身近な建物では以下が基準となる。

(画像引用:株式会社メルすみごこち事務所 https://e-chintaiowner.com/bouka/


・防災管理者とは

防火管理制度に2009年に追加(施行)された防災管理制度(法36条)により規定された。よって、同規定は法第8条(防火管理制度)を準用し、第8条の「防火管理者や防火管理上」等の文言を第36条では「防災管理者や防災管理上」と読み替えて運用している。

その目的は、心配が増してきた“地震やテロなど火災以外の災害”の発生に対する人命等の被害の軽減となる。防“火”管理が“火災”対策なら、防“災”管理は、主に“地震・テロ”対策である。

その関係上、防災管理者が必要な防火対象物は大規模かつ高層となり、東京消防庁管内の防火管理者が必要な防火対象物はテナントまで含めれば約40万件、対して防災管理者が必要な防火対象物は約2千件(2019年3月)と、約0.5%にすぎない。

地震・テロによる火災も当然に予見され、防災管理者はその実務上、防火管理との一体的な業務遂行がもとめられる。そのため防災管理者が防火管理業務も兼任するべきで、当該防火対象物で防火管理業務を委託する場合には防災管理業務も委託しなければならない。

よって防災管理者の資格要件は、管理的又は監督的な地位にある者で、甲種防火管理講習及び防災管理講習を修了した(又は相応の学識・経験を有すると認められる)者となっている。

以下は防災管理者が必要な防火対象物である。



# 外部委託が出来る防火対象物

防火管理業務を外部委託できるのは以下である(物件所在が東京都内の場合)。


上記の条件を満たしつつ次のいずれかに該当しなければならない(東京消防庁)。

  1. 東京消防庁管外に勤務している

  2. 身体的な事由(高齢・病気等)がある。

  3. 日本語が不自由である。

  4. 従業員がいない又は極めて少ない。

  5. その他消防署長が認める事由がある。

尚、②防災管理者の業務を外部委託できる防火対象物(防火管理者が必要)は、上記の基準を共に満たす防火対象物である。つまり、①が②を包含している(下図)。そして、②の建築物等において防火管理業務を外部委託する場合は、防災管理業務も委託する義務がある。

図:防火(防災)管理業務を委託することができる防火対象物


以上は東京都の例であり、実際には各自治体ごとに条件が定められている。しかし、大まかな考え方は共通である。すなわち自主管理が難しいと認められる要件を備えていれば良いのである。


# 防火(防災)管理者の外部委託の利点

  1. なり手不足や防火(防災)管理者が転居・退職等の対応が可能で、未選任による違法状態を回避・改善できる。

  2. 防火管理者選任届や消防計画等の書類作成・届出手続きを適正に行えることで従業員は本業に集中できる。

  3. 消防署の立入検査等の査察の対応が円滑かつ自社で行うより負担が激減する。

  4. 防火(防災)管理業務をプロに任せることで実効性・安全性の高い防火(防災)対策が実現でき、職場の負担の軽減し、安心感も得られる。

# まとめ

経済の低迷による外国資本の流入、少子高齢化による建物所有者の高齢化、外国人人材の増加など今後わが国では年齢や言語等を事由に、防火(防災)管理者の外部委託の更なる需要が見込まれる。防火(防災)管理者のなり手がいたとしてもIT化・DX化が進めば進むほど1人当りの業務負担や学習分野が増え、その上に防火(防災)の業務まで担うのは酷である。外部委託をする利点は大きく、まずは所轄の消防署又は専門業者に相談してみよう。


参考

・設備と管理 2021年2月号

・設備と管理 2021年4月号

・設備と管理 2021年6月号

・東京消防庁

・株式会社メルすみごこち事務所

・消防手続申請サポート札幌


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コンテンツ「防火管理者に選ばれたら何をすべきか」

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