いざという時、稼働するために!非常用電源設備の点検整備
更新日:2022年2月17日
(公開 2022/01/17)

1.サマリー
突然の停電でも、速やかに電源を供給するための非常用電源設備ではあるが、ただ設置しておけばよい、というものではない。
日々の点検や、定期的なメンテナンスもあってこそ、停電時に力を発揮する設備と言えよう。
非常用電源設備の点検や整備について、法律的に行わなければならないものから、年数が経過した際に行わなければならない整備(オーバーホール)について解説する。
2. 目次
# 発電設備の負荷運転試験は一定の基準を満たすと6年に1回に緩和
# 10年程度経過したら、発電機メーカによるオーバーホールが有効
3. コンテンツ
# 内燃力発電設備は消防法による点検項目が多い
非常用発電設備として最も多く用いられている内燃力発電設備による非常用発電設備は、消防法による点検が義務付けられている。
特に半年に1回の機器点検は、日常の巡視点検として行わなければならない。1年に1回の総合点検では、発電設備の負荷運転や、商用電源からの切替性能試験なども行わなければならない。1年に1回の総合点検は、電気事業法でも定められている1年に1回の受配電設備の点検と合わせて行われることが多い。点検時に、発電機の絶縁抵抗や運転電流値、潤滑油の油圧などを測定し、発電設備の正常性を確認する。
# 発電設備の負荷運転試験は一定の基準を満たすと6年に1回に緩和
消防法による1年に1回の発電設備の負荷運転試験は、商用電源から切り替えが停電時以外に行えない場合は、水槽等の疑似負荷を接続して行うことが多い。
しかし、発電設備が屋上に設置されている等の理由で、頻繁に負荷運転試験を行えないような環境にあるようなことも多い。そのため、運転等の維持に係る保全策が取られている場合、6年に1回の試験周期に緩和される法改正が平成30年に行われている。運転等の維持に係る保全策とは、潤滑油や冷却水の成分分析を行うことや、燃料噴射弁の動作確認、Vベルトがメーカ推奨の経年劣化年数前に交換をされている等の項目を満たすことを言う。発電設備の負荷運転試験の年数が緩和される代わりに、いつ停電が発生しても爆発やオイル漏れ等を起こさないように起動ができるような状態としておくということである。
# 電気事業法による非常用発電設備の点検
非常用発電設備はディーゼル発電機等の内燃力発電設備の部分は、消防法の他に電気事業法の規制も受けることになる。
電気事業法では、非常用発電設備の点検として、1か月に1回の月次点検では、外観点検を行うことが定められている。また、1年に1回の年次点検では、自動起動と自動停止装置の状態に異常はないか、内部蓄電池の漏れや接続と絶縁抵抗値の測定、起動装置と停止装置の動作に異常がないか等、月次点検よりの詳細な点検を行うことが義務付けられている。これに加えて、消防法による点検を行う必要があるが、通常は周期を合わせて月次点検に合わせて6か月点検などを行い、年次点検に合わせて負荷運転試験を行うなどのようにしている。
# 10年程度経過したら、発電機メーカによるオーバーホールが有効
こうした点検を実施していれば、必ず停電時に稼働してくれるという保証があるわけではない。
年数が経過してくれば、故障する部品なども発生することもあり、こうした箇所の部品交換も必要な整備だ。故障が発生してからの交換では、いつ起きるかわからない停電に備えることができない。そのため、10年程度経過した際の定期的な消耗品の交換作業(オーバーホール)を行うことが多い。発電機メーカで指定の経年劣化部品の交換を数日にかけて行うというものだ。非常用発電設備は、常時稼働している設備ではないため、故障が起きてからの部品交換は難しい。故障が起きる前であっても、年数が経過した部品は交換を行う必要がある
# まとめ
非常用発電設備の点検や整備は、いざという時の備えともいえる。
特に整備(オーバーホール)に関しては、法的な実施の義務付け等がないため、ビルの所有者などから無駄な出費と判断されてしまうこともあるのが実情だ。
その際に、停電が起きた際の非常用発電設備の重要性を認識してもらうためには、災害などで停電が長期化することもありうるということを考慮してもらい、停電時に安定稼働が行える非常用発電設備がどれだけ重要かを訴えかけることが重要だ。
参考
https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/suisin/items/h30_leaflet01.pdf
https://www.jlp-loadtest.com/guide/
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コンテンツ「非常用電源設備とは何か? その種類と設置時に規制される法律」