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介護報酬改定にともなうBCP対策について


介護報酬改定にともなうBCP対策

(公開 2021/03/14)

 1. サマリー

2020年から始まったコロナを受けて感染症や防災意識が日々高まりを見せた。特に、老人ホームなど介護の現場ではコロナへの対応を契機に対応策の検討がより重視されつつある。それをうけ2021年4月に予定される介護報酬改定では「感染症や災害への対応力強化」が論点として組み込まれる見込みである。結果として、老人ホーム等介護施設運営にもBCPへの対応が義務的に求められることになる。約3年の経過措置はあるものの、運用の実現には時間がかかることから、当該対応の準備を早くから実施することが適切な運営への第一歩として重要である。


 2. 目次


 3. コンテンツ

# 2021年介護報酬改定について

2020年のコロナ騒動を受けて医療・介護の現場も疲弊しているとの話を耳にする。現場の方々には頭が上がらない気持ちでいっぱいではあるものの、その中で感染症や大規模災害に対する国民的意識の不足が表面化することとなった。それを受けて2021年4月の介護診療報酬改定では当該内容が盛り込まれる見込みである。


具体的には介護給付分科会、令和3年1月9日付199回の付属資料「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」などを参考いただきたいが、ここで議論したいポイントは「感染症や災害への対応力強化」という項目である。こちらを見れば、①感染症対策の強化、②業務継続に向けた取組の強化、③災害への地域と連携した対応の強化、④通所介護等の事務所規模別の報酬などに関する対応の4点がみれられ、特に②の論点を見ると「感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける。」とされ、3年の猶予はあるものの所謂「義務規定」となっている。③が「努力義務規定」である点と比べると対照的だ。今後は所謂業務継続に向けた取り組みとしてBCPを勘案した運用を行うことで介護診療報酬にも影響が与えられることを明確にしたことが本件の重要な一歩であったといえよう。

厚生労働省・感染症や災害への対応力強化

# 求められるBCPの論点

上述のように改正論点として介護報酬要件にBCPが組み込まれる方針が示されてはいるものの、実態としてどのような対応が求められるのであろうか。一般的な内容としてのBCPは大げさなものではないものの、やはり介護施設における内容は少なからず、当該対象を意識したものになるのではなかろうか。今回は、厚生労働省老健局が作成した「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」、「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」を参照しつつ、全体像を確認したい。


結論として、当該BCP策定の対応は「通所サービス固有事項」、「訪問サービス固有事項」、「居宅介護支援サービス固有事項」のような、ずばり社会福祉施設としての対応が求められるものを除くと、非常に一般的で、ある種当たり前の対応を求めているということになるであろう。個別の論点については別途記載することとして、大枠としての内容を振り返ると、結局以下の表に集約されると考えられる。

自然災害BCPフローチャート

3以外の論点は驚くほどに通常の防災対策、BCP対策と同一である。別途記事にしている防災計画やBCPとの議論、ハザードマップの議論にしても当方が発信している内容を参考にしていただければ十二分にカバーできるのではなかろうか。これは内容面において結局のところやるべき対策というのは共通してくるということを示しているということであろう。その点を鑑みて、まず足元からできることを洗い出すことが必要なのではなかろうか。


# 現実的な運用に向けて

上述の内容を受けて共通することでもあるのであるが、結局のところ防災対策に近道なしということである。しかし、裏を返せば地道にやった対策はそのまま結果として跳ね返ってくるということでもある。その意味で、今回の介護報酬改定において定められた内容は、今まで防災対策やBCPに意識を振り向けてきた組織にとっては驚くに値せずということではなかろうか。一方で、本計画の内容を見て思うことは、これらの内容を日常意識にまで落とし込むことができる組織はそう多くないのではないかということである。その意味で、日々の業務に落とし込める、無意識でも結果として防災、BCP活動になる仕組みをつくっていくことが重要なのではないか。その点を意識して防災計画やBCPを作成することを意識していただきたい。


現実的にいざという時に使えない防災計画ほどむなしいことはない。たいていの場合、防災訓練にせよ形骸化してしまう色合いがある以上、「無意識でもできる」ということが現実的な運用への第一歩になるのではないであろうか。その点を含め必要に応じて専門家に相談したり、各種資料に目を通すことで、自身の組織にあったBCP策定に努めてもらえればと心から願う。


参照:


関連:

コンテンツ「老人ホームと水害」

コンテンツ「BCPと防災から見たクラウド利用について」


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