top of page

建築設備定期検査とは


建築設備定期検査とは

(公開 2021/03/10)

 1. サマリー

建物には消防法に基づく設備や管理状況の点検の他、建築基準法に基づく法定点検も存在する。消防法と同じく、建築基準法に基づく点検も一言でまとめられず、似たような言葉も多いため複雑な印象を受ける。しかし、違反には罰則規定もあり、何より建物利用者の命にも関わる話になるため、建物に求められている各点検報告について、建物責任者は正しく把握する必要があるだろう。


 2. 目次


 3. コンテンツ

# 建築設備定期検査とは

建築設備定期検査とは、建築設備の異常に起因する事故から建物利用者を守るために行う法定検査のことである。


病院、福祉施設、飲食店など、不特定多数の人や、災害に弱い人が入居している建物では、老朽化や設備の維持管理不良などにより大きな事故や災害時に多大な被害をもたらす危険性がある。このような被害を防ぐために、建築設備定期検査では、建物の設備に関わる部分の安全性を確かめ、その結果を地方自治体に報告することが建物所有者や管理責任者に義務付けられている。


建築設備定期検査は建築基準法第12条を根拠法としており、そのことから現場では「12条点検」と省略して言われることが多い。なお、12条点検は建築設備定期検査だけではなく、大きく4つに分かれている。その内容は①建物の維持管理状況を調査する「特定建築物定期調査」、②防火扉や防火シャッターが正しく機能するか調査する「防火設備定期検査」、③エレベーターやエスカレーターが安全かを調査する「昇降機等定期検査」、そして④建築設備が正しく機能するかを調査する「建築設備定期検査」となっている。①と④は若干紛らわしい用語だが、簡単に言うと①特定建築物定期調査は建物そのもの(地盤や外壁等)を検査し、④「建築設備定期検査」は後述する建築物の設備について検査を行う点が違いとなる。


検査対象となる建物は地方自治体によって独自の基準が定められていることが多く、この場で一口に述べることはできない。ただ、全国的に事務所のような基本的に特定の人物しか使わない建物は要件が緩く、病院や福祉施設、学校、飲食店等の不特定多数の人物が使う建物用途は点検実施の要がある傾向にある。


自身の管理する建物が建築設備定期検査をする必要がある場合は、建築士か建築設備定期検査資格保持者に点検を依頼する必要がある。点検は1年に1回行い、報告書として管轄の特定行政庁に届け出ることも忘れてはならない。これらの義務を怠ると、100万円以下の罰則の対象となる可能性があるほか、万が一災害発生時に該当設備の維持管理の不備が原因による被害を出してしまった場合、その責任を負うことになる点にも注意されたい。


# 4つの対象設備

建築設備定期検査の対象となる設備は4つある。それぞれ建物に必ずしも設置されているわけではないので、検査対象となる建物に備え付けられており、かつ管轄の特定行政庁が検査を求めるものさえ行えば良い。4種の設備については以下のとおり。


①給排水設備

給排水設備

給排水設備は、建物内に水を供給する「給水」と、汚水や雨水等を建物外に排出する「排水」に関する設備の総称である。具体的には、水道管、給水タンク、浄化槽及びポンプ等がある。たとえば、共同住宅においては、水道から水を出すことができるとともに、トイレや浴室で使用した水を流すことができる。これら使用する水を貯めたり各居室に配管する設備や、逆に使用した水を下水道に流すための配管等全体が給排水設備である。


点検では、装置や配管が適切に設置されているかや、それぞれに腐食や破損に伴う水漏れがないか等を確認する。


②換気設備

換気扇

建物内の空気を入れ替える設備の総称を換気設備という。具体的には換気扇や、送風機などがあり、実は窓も換気設備に該当する。そのため、窓がない部屋をもし作るのであれば、そこには機械式の換気設備を設置する必要が出てくることになる。


点検では、ダクトに備わった防火ダンパー(ダクトを遮断し、炎や煙が広がることを防ぐ装置)の作動点検や、適切に換気が行われているかを風速計を使用して確認する。


③非常用の照明装置

非常用照明

非常照明設備は災害により建物が停電した時に、非常用バッテリーで点灯する照明設備のことである。似て非なるものに、消防法を設置根拠とする誘導灯がある。誘導灯の中には階段通路誘導灯といって、よく見かける緑色の誘導灯ではない、一見普通の照明器具に見える誘導灯がある。それぞれの違いは、非常用照明装置が建物内の明るさを確保するために設置されているのに対し、階段通路誘導灯は建物利用者を安全に屋外へ避難させるために設置されている。とは言え、どちらにも使用できる照明も市販されており階段や通路にあれば結局は同じことではないかと思うのだが、法律の要請は別で、点検報告の仕組みも異なるという点については間違ってはいけない。


点検は装置に備わっているボタンや紐を使用することによる非常用バッテリーの確認のほか、照度計を用いた明るさの確認等も行う。


④排煙設備

排煙窓

排煙設備とは、火災時に発生した煙を屋外に排出することで、建物利用者の避難時間の確保を目的とした設備である。②換気設備と似たような印象を受けるだろうが、換気設備が「日常の建物内の空気の入れ替え」を目的としているのに対し、排煙設備が「火災時の煙を設備により排出する」点に違いが見られる。画像のように天井付近に設けられた窓から排煙を行うものの他、機械式で強制的に排煙を実施する装置もある。


点検では実際に作動させてみて異常がないか、また、風速計を用いて規定値どおりの空気の流れが出ているかどうかの確認を行う。


# まとめ

建物を維持管理していく上で、建築基準法や消防法により様々な定期検査の義務が建物所有者や管理責任者に課されている。建築設備定期検査はそのうちの一つで、日常及び災害時に各種設備が正しく動くかどうかを定期的に検査するものである。建築設備定期検査は建築基準法を根拠法令として要請されているものであるが、12条点検はそれぞれ報告時期が異なっているため、勘違いをして点検漏れがあってはならない。建物責任者は、点検報告の実務を業者に依頼することは良しとしても、必要な検査の種類、点検頻度、報告先については、自身で把握しておく必要があるだろう。


参考:

金 政秀 (著, 編集)他「基礎講座 建築設備」学芸出版社 2020年



0件のコメント
bottom of page