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自動火災報知設備の遠隔試験とは


自動火災報知設備の遠隔試験

(公開 2021/08/16)

 1. サマリー

 自動火災報知設備の感知器に触れずともその点検を行える「遠隔試験」。新しい技術ではないものの、あまり普及せず、知る人も少ない試験である。しかし、点検作業を効率化でき、特に居室内に入る必要がなくなることから、マンション住民等に非常に喜ばれる機能である。IoTによる点検自動化にはまだまだ時間がかかることに加え、withコロナ時代において、人と人の接触機会を減らせる遠隔試験を行えるのであれば、積極的に行っていくのが良いであろう。


 2. 目次

# 遠隔試験とは

# 遠隔試験を行うためには

# 感知器試験の未来

# まとめ


 3. コンテンツ

# 遠隔試験とは

感知器の作動試験

消防設備点検と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、長い棒を使って天井にある機械を点検している消防設備業者の姿なのではないだろうか。そこで行われている点検とは自動火災報知設備(以下、自火報)と呼ばれる消防用設備の点検の一部である。自火報とは、熱や煙を感知したり、発信ボタンを押すことで、建物全体に火災を知らせ、それに合わせて他消防設備の起動や消防機関への通報、警備保障会社への連絡に用いられる消防設備である。言ってみれば、消防設備の司令塔とも言える存在が自火報である。前述の長い棒を用いた天井の点検は、自火報の部品のひとつ、感知器が正常に作動するかどうかを点検するものである。


自動火災報知設備全体図

「自動火災報知設備とは 能美防災」


しかし、このように一般的に消防設備点検の姿としてイメージしやすい姿である自火報の感知器点検を行わなくても済む方法がいくつかあるのをご存知であろうか。そのひとつが、「遠隔試験」と呼ばれる、感知器を直接触らず点検する方法なのである。これは文字通り、部屋の中に入らず、部屋の外側から「遠隔で」点検を行う方法であり、実施するには条件があるものの、これを行えば居室に入らなくても点検が可能になるため、とくにマンションやアパート住人から喜ばれる結果になりやすい。また、消防点検を請け負う業者にとっても時間が節約でき、良いことずくめな点検方法なのである。


# 遠隔試験を行うためには

さて、ここまで説明すると、共同住宅を管理もしくは所有している方々にとっては、半年に一度の消防設備点検で遠隔試験を行ってほしいと思われる方々が多いであろう。しかし、前述のとおり、これを行うには条件がある。そして、条件が整っていない場合、それをクリアするのはあまり容易ではない。


なぜ容易ではないのか、以下では、具体的に遠隔試験を行うための条件を述べつつ、遠隔試験実施の流れを合わせて説明する。


条件1. 外部試験用の点検コネクターが設置されている。

遠隔試験機の差し込みコネクター

一般的によく見かけるのがインターホンと一体化したものである。ここに、点検用の専用の器具を接続し、点検をすることとなる。いくつかある条件のうち、これを達成するのが一番難しいであろう。なぜなら、天井にある感知器に直結した点検用配線を部屋外部に延長した上で専用のコネクターを設置する必要があるからである。すなわち、この条件を満たしていない建物にあっては、そこそこの規模の工事を行う必要が出てくるのである。遠隔試験をどうしても行わなければならない特段の事情がない限り、そのために費用を捻出して工事をするかと問われれば、正直そこは疑問である。


条件2. 点検する消防設備業者が外部試験用点検器具を持っているか

条件1. により、建物側の外部試験準備は整った。しかし、外部試験にはそれ専用の器具が必要となるため、点検を行う消防設備業者がその器具を持っていなければ、外部試験ができないということになる。


器具の扱いは簡単で、その操作自体に特別な知識は必要としないものの、点検器具自体は比較的高価であり、器具の性能を確保するために定期的に校正を行う必要があるなど、維持費もかかるため、道具として用意していない消防設備業者も多い。また、感知器のメーカー等により使える点検器具が異なる場合があるので、コネクター差し込み口の形状や、感知器の種類の確認等は点検を依頼する消防設備業者と事前に打ち合わせる必要があるだろう。


これらの条件をクリアすることにより、晴れて遠隔試験を行えることとなる。遠隔試験を行えば、不必要に居住者の居室に立ち入る必要もなく、作業時間の短縮にも繋がる。ベランダの避難はしご等を点検する際には居室に入る必要はあるものの、避難はしごがない部屋にあっては部屋に入らずとも点検が可能になるのである。点検作業員は、遠隔試験で居室外部から点検を行い、もし異常が発見された場合にのみ居室内に入って該当感知器を精査すればよいのだ。


withコロナの時代において、そのような機能をもっている建物は積極的に使用していくべきであろう。もし、自身の管理物件に点検コネクターが設置されているにもかかわらず、消防設備業者がそれを使用していないようであれば、宝の持ち腐れになっているので、使用を打診してみたほうが良いであろう。もしかすると、消防設備業者もその存在に気づいていないかもしれない。


# 感知器試験の未来

将来的には、感知器の点検は人の手を離れ、自動化されていくと当方は予想している。なぜなら、人が一つひとつ点検するよりも、機械に任せたほうが効率がよく、低コスト化にも繋がるからである。


それでは、遠隔試験が感知器作動試験のひとつの到達点かと言えば、そうではない。一つの到達点はやはりデジタル技術による完全自動点検であろう。デジタル技術を活用すれば、点検はより効率的で、間違いがなく、データの収集も容易となる。今になってみれば、遠隔試験はひどく中途半端な仕様であり、人の手による点検から自動化へと昇華できていない。そして、それでいて遠隔試験で人が行っていることは、「コネクターを点検口に挿して点検器具のボタンを押す」という別に難しくもないことに過ぎないのである。


もし、消防設備点検において人の手が本来的に不要な箇所を自動化できれば、本当に人の手が必要な設備の点検や別の業務に人的ソースを使用できるようになり、建物の安全性、ひいては建物利用者の安心に繋がるのである。現に、メーカーはそのような機能をもつ自動火災報知設備一式を開発し、一部では既に流通し始めている。費用はまだまだ高く、機能についても十分とは言い切れないが、やがて価格が下がり、使いやすくそして高機能なモデルが現れ、一般的なマンション等にも普及していくであろう。


# まとめ

感知器の遠隔試験は、点検の自動化を考える上で生まれた過渡期の産物と言えるが、点検効率やwithコロナ時代、そして完全自動点検の普及速度を鑑みると、まだまだ利用価値がある。遠隔試験を導入することで、建物の点検実施率は大幅に上昇し、建物の安全性がアピールできる上、他人に居室に入られたくない居住者からの満足度も高くなる。点検時間も短縮され、点検に立ち会いを行っている良心的な管理会社や建物オーナーの人的リソースを無駄にすることもなくなる。一方で、やはり導入コストはかかってしまう。それでも、新築、リフォーム問わず、自動火災報知設備を設置する場合は是非導入を検討してみてほしい機能である。居住者の満足度は本当に高いのでおすすめである。


参考:

消防庁予防課長通知「自動火災報知設備の遠隔試験機能に係る外部試験器の取扱いについて」

https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/080524yo105.pdf



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