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避難設備概要


避難設備概要


(公開 2022/02/24)

1. サマリー


・避難設備とは何か

・避難設備の種類

・避難設備の設置基準

今回の記事では避難設備にはどのような種類があるのか、そして、その設置義務について解説する。避難設備は他の消火設備と比べて設置基準の算定が特殊である。また、設置個数の減免や規制の強化について細かい法令が多い。この記事が避難設備設置のための検討の一助となれば幸いである。



2. 目次



 3. コンテンツ

# はじめに

避難の際、通常使用されるのは階段である。しかし実際には、火災によって通路が通れない時など、階段が使えない状況になることもある。そのような際に使用されるのが避難設備である。消防法で規定されている避難設備は、①避難はしご、②緩降機、③救助袋、④すべり台、⑤避難用タラップ、⑥避難橋、⑦避難ロープ、⑧すべり棒、の8種類ある。それぞれに特徴があり、設置できる建物が決まっている。以下では避難設備の種類を簡単に説明するとともに、それぞれの設置基準について解説していく。



①避難はしご

避難設備はしごは、大別すると、固定はしご、吊り下げはしご、立てかけはしごの3種類がある。

固定はしごは建物に固定されているはしごであり、常時使用可能な状態になっているものと、レバーなどで展開するものがある。(図1)

展開した固定はしご

(図1)展開した固定はしご



吊り下げはしごは、窓枠や専用の固定具に取り付けるもの(図2)と、ハッチに取り付けるものがある。

折り畳み式の吊り下げはしご

(図2)折り畳み式の吊り下げはしご


また、避難はしごについては以下の別記事(参考1)でも紹介しているので、そちらも参考にしてほしい。

(参考1)避難はしご概要


②緩降機


緩降機

(図3)緩降機

緩降機とは、減速装置がついた一本のロープを身体に固定し自重で降りるものである。釣瓶の井戸をイメージすると分かりやすいかもしれない。1人用だが、ロープの両端に着用具が付いており、1人が降下すると自然にロープの反対側の着用具が上昇する。よって、連続して降下することができるようになっている。



③救助袋

展張した袋の中をすべり降りる斜降式(図4)と、袋内部と身体との摩擦によって減速しながら垂直に降下する垂直式(図5)がある。斜降式は地上での設置作業が必要だが、垂直式は地上での作業が不要なものが多い。


斜降式

(図4)斜降式



垂直式

(図5)垂直式

④すべり台

直線式(図6)と螺旋(らせん)式(図7)がある。設置に大きなスペースを必要とするが、介助が必要な方でも比較的安全に降下できる。病院などに設置される事が多い。


直線式

(図6)直線式


螺旋式

(図7)螺旋式



⑤避難用タラップ

避難用タラップ

(図8)避難用タラップ

避難用タラップは格納式の階段である。レバーやボタンを操作すると自動的に階段が降りてくるものが多い。

⑥避難橋

避難橋は、主に屋上に設置される建物と建物の間に架けた橋である。避難橋を渡って別の建物に避難することができる。


⑦避難ロープ

避難ロープ

(図9)避難ロープ

ロープに上端を固定する設備がついたものが避難ロープである。すべり落ちないように結び目や足掛けがついている。


⑧すべり棒

避難用に作られた固定された一本の棒である。すべり降りる速度を自力で調節しなければならないため、落下等に注意が必要である。

画像引用:

(図1)〜(図6)、(図9) オリロー株式会社 HP

(図7) 株式会社富士産業

(図8) 株式会社ミナカミ

# 設置基準

次に避難設備の設置基準について解説する。

避難設備の設置義務があるかどうかは建物の階ごとに判断する。特定の階において、用途ごとに一定の収容人数を超えると設置義務が生じる。また設置する避難設備の個数も収容人数によって決まり、収容人数が多いほど設置個数も多くなる。以下(表1)にまとめた。

ちなみに、避難設備は1階と11階以上の階には設置義務がない。

避難設備の設置個数の算定

(表1) 避難設備の設置個数の算定


また、建物の用途と階数によっては設置基準できない避難設備がある。たとえば、避難ロープやすべり棒は3階以上の階に設置しても設置基準を満たすことはできない。各階において設置できる避難設備は以下の(表2)を参考にして欲しい 。

防火対象物の階層別避難設備適合表

   (表2) 防火対象物の階層別避難設備適合表

画像引用:広島市役所HP

#設置の減免と規制の強化

特定の建築基準を満たす建物においては避難設備の設置が必要な個数が減免されることがある。減免される項目に関してはかなり細かい部分まで規定がある。減免を考慮する際は必ず専門の技士や設備業者に相談しよう。ここでは代表的な例を紹介する。

・避難階段、または特別避難階段がある場合

・一定の建築基準を満たし、渡り廊下が設けられている場合、その階の避難設備の設置を渡り廊下の数に応じて減免

・一定の建築基準を満たし、屋上に避難橋が設けられている場合、屋上の直下階の避難設備の設置個数を避難橋の数に応じて減免

・特定用途の建物においては、一定の建築基準を満たし、スプリンクラーが設置されている場合、当該における避難設備の設置を免除

・一定の建築基準を満たし、1500㎡以上の屋上広場がある場合、直下階には避難設備を免除

これとは逆に、設置の規制が強化される場合もある。例えば特定一階段等防火対象物にあたる建物などがこれに当たる。

特定一階段等防火対象物とは、1階もしくは2階に通じる階段が1つしかない3階以上の階もしくは地階を持つ、特定の用途に使用される建物のことである。雑居ビルなどがこれに該当することが多い。このような構造の建物では避難が困難になることがあるため以下のような規制が設けられている。

・安全かつ容易に避難できるバルコニーなどに避難設備を設けること

・避難設備が常時、容易かつ確実に使用できる状態にあること

・1動作で容易かつ確実に使用できる避難設備を設けること

特定一階段等防火対象物については下記の記事(参考2)で詳しく紹介している。


(参考2)特定一階段等防火対象物とは


避難設備は階段で避難できない場合に人命を守るための重要な救命道具の1つである。消防法で設置義務がある設備は8種類あり、それぞれに特徴がある。設置基準や規制に関しては他の消防設備に比べ特に細かく規定されている。設置できる避難設備は、建物の構造、道路を含めた立地、収容人数、市町村条例など、さまざまな条件によって決まる。避難設備を正しく設置して、いざという時の備えとしよう。

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