防火対象物点検とは

更新日:2021年5月1日


防火対象物点検資格者

(公開 2021/01/17)

 1. サマリー

防火対象物点検は、建物の防火管理が適切に行われているかどうかを点検する監査制度である。新宿歌舞伎町の雑居ビル火災を受けて制度化された同点検は、該当建物のテナント関係者全てにその報告義務を課す。点検の無違反を続けることにより点検報告期間が延長される特例認定があるため、テナントの関係者は防火管理を適切に行い、積極的に活用すべきである。


 2. 目次

# 防火対象物点検とは

# 制度化の背景

# 対象となる建物

# 見逃しがちなポイント


 3. コンテンツ

# 防火対象物点検とは

防火対象物点検とは、建物全体の防火管理が適切に行われているかどうかを点検するものである。防火管理者が消防計画をもとに行う日常の防火管理や消防設備の点検とは何が違うのかというと、防火対象物点検は、防火管理者が適切に業務を執行しているか自体を点検したり、建築基準法に基づく防火扉のような防火設備の維持管理状況を含めた建物全体の点検を行う。いわば、防火対象物点検は監査だ。点検が適切に行われているかどうかを点検するのである。消防法第8条の2の2に基づいた厳正な要請であり、点検対象となる建物の関係者はこれを「防火対象物点検資格者」という専門家に依頼し、結果を消防局に報告しなければならない。なお、違反すると30万円以下の罰金又は勾留(消防法第44条第11号)が科される場合がある。


# 制度化の背景

本点検制度は、平成13年9月1日に新宿区歌舞伎町のビル火災を受けて法整備が行われた。同火災は小規模な雑居で発生したにもかかわらず、44名もの人名を奪う大事故となった。これだけの死者を出した理由として、階段が物置と化し避難階段として使用できない状況になっていたこと、防火管理者が選任されておらず消防設備の点検や避難訓練が行われていなかったこと等、数々の消防法令違反が行われていたことが挙げられる。つまり、火災が起きても火を消せず、逃げ場のない状況が作り出されていたのである。同種事故の再発防止策として、防火管理体制そのものを点検し、少しでも防火管理体制の強化を図ろうとするのが本点検制度の趣旨である。


# 対象となる建物

気になる対象建物の要件は次のとおりである。


①特定防火対象物で収容人員が300人以上

②収容人員が30人以上の建物で次の要件に該当するもの

 ・特定用途部分が地階又は3階以上に存するもの (避難階は除く)

 ・階段が一つのもの


①及び②のうち、一つでも該当すると防火対象物点検の実施義務が発生する。それぞれの条件を簡単にわかりやすく伝えるならば、①は「不特定多数の人が大勢入る大きなビル」である。具体的には大型商業施設や大病院が挙げられ、マンションやオフィスビルでは該当しないことがほとんどである。①は誰が見ても大きいと感じる建物のはずで、建物の規模からして点検しないとまずいだろうなという感想を抱くのが通常であろう。②は「階段が一つしかない商業用雑居ビル」と考えていただければ大方間違いはない。②の条件は意外と該当する建物が多い。3階建ての小さな建物でも、階段が一つで3階部分がカフェであれば該当だ。そのような視点で見ると、意外と多いことがお分かりになると思う。


また、注意すべきは各テナントの責任者毎に本点検が義務付けられていることである。防火対象物点検は建物全体の防火管理状況を点検するもので、それだけ聞くと建物で1回やればいいのかと誤解してしまうが、点検報告義務は各テナント毎の責任者に求められるため、テナントの数だけ報告が必要になる。たとえば、3つのテナントが入居したビルが点検対象となれば、3つの防火対象物点検が必要になるのだ。


点検期間は1年に1回だが、3回無違反で点検をパスすると、以降は3年に1回の点検で可とする特例認定制度があるため、活用していない関係者の方は是非活用していただきたい。


# 見逃しがちなポイント

本点検については「防火対象物点検資格者」という資格(所定の実務経験と講習を受講することで獲得できる)の所持者が行える。この資格について、別の限定条件はないため、資格さえ持っていれば防火管理者でも防火対象物点検を行うことができる。もっと言えば、自分が防火管理者として選任されているビルの防火管理状況を自分で点検することができるのである。繰り返しになるが、防火対象物点検は監査である。自分で自分を監査するのは妙な気がするが、制度上は認められている。筆者の知る限り、それを悪用した例は聞かないが、悪用して大事故に繋がる事例があればすぐに改正されるだろう。考えようによっては、防火管理者が防火対象物点検を兼任すれば、点検の効率化を図ることはできるので、防火管理を適切に行う限り、建物のオーナーやテナントの代表者は兼任を検討するのも悪くないであろう。なお、最後は宣伝となるが、当方は防火対象物点検の資格を持ち、かつ防火管理者の委託業務も行っているため、合わせて委託していただければあなたのコスト削減に繋がることは付記しておく。



0件のコメント

最新記事

すべて表示