防火戸概要


防火戸とは

(公開 2021/02/20)

 1. サマリー

防火戸とは、建物の延焼を防ぐために閉鎖する仕組みの防火設備の一種である。防火設備は防火を目的とするものの、消防用設備とは別の存在である点には注意しなければならない。点検の制度も厳格に規定されており、誰しもが点検できるわけではない。消防用設備と同じく、不備があると人命危険に直結するため、防火設備の維持管理をするのは建物責任者の義務である。


 2. 目次

# 防火戸とは

# 防火戸の仕組み

# 点検について

# 防火設備と消防用設備は別


 3. コンテンツ

# 防火戸とは

防火戸とは、火災が発生した際に閉鎖してあることで、炎の通り道を閉ざして建物の延焼防止に威力を発揮する防火設備の一種である。防火扉ともいう。道を閉ざして延焼防止を図る同機能を持つ防火設備として、他に防火シャッター、耐火クロススクリーン、ドレンチャーなどが存在する。防火シャッターはその名のとおり、シャッターが閉鎖する形で、延焼を防ぐ。耐火クロススクリーンは布製の防火シャッターのイメージを持つのがわかりやすいだろう。ドレンチャーは、鋼鉄でも布でもなく、水の噴霧で炎を遮る防火設備である。

防火戸

【随時閉鎖型防火戸 画像:文化シヤッター】


防火シャッター

【防火シャッター 画像:文化シヤッター】


耐火クロススクリーン

【耐火クロススクリーン 画像:文化シヤッター】


ドレンチャー

【ドレンチャー式ウォータースクリーン 画像:鹿島建設】


防火の名がついており、一見消防用設備の一種かと思われるが、法的根拠は建築基準法であり、同8条及び12条で維持保全と点検報告の義務が規定されている。そのため、消防法を根拠とする消防用設備とは似て非なる存在であることに注意されたい。建築基準法と消防法は、防火防災の観点から見ればその性質上重なり合う部分が多分に存在する。防火設備は正にその一例と言えて、防火設備は建築基準法の要請によるものの、その起動にあっては消防用設備たる感知器に依存する場合も多い。また、防火設備も消防用設備と同様に点検報告の義務がある。しかし、根本は別の法律を根拠としていることもあり、それぞれの点検資格者と点検の報告先は明確に異なる。点検の報告先は、消防用設備が消防局であるのに対し、防火設備は特定行政庁である。


防火設備を点検する資格があるのは、一級及び二級建築士か、防火設備検査員の資格を有する者となる。以前は、防火設備の点検について専門的な検査基準と資格者に関する規定は存在しなかったが、2014年の建築基準法改正により、資格者による点検が制度化された。これには、2013年10月、福岡の整形外科医院で火災が発生し、防火設備等の不備で延焼が拡大、最終的に死者10名、負傷者7名を出す大きな事故があったことが背景にある。同改正法の施行は2016年6月であるため、この資格者制度自体はまだ歴史の浅い制度と言える(2021年2月現在)。


# 防火戸の仕組み

防火戸には常時閉鎖型と随時閉鎖型の防火戸が存在する。常時閉鎖型は文字どおり普段は閉鎖していて、人が通るときだけ開けられる作りのものをいう。一方、随時閉鎖型は一般に連想される、火災を感知し自動的に扉が閉まる構造のもののことをいう。自動的に閉まる仕組みとしては、建物の天井等に設けられた熱もしくは煙感知器が火や煙を感知すると、連動制御器がそれを感知し、定められた区画の防火戸を一斉に閉じる仕組みとなっている。

防火設備の仕組み

【画像:三和シャッター工業株式会社】


これらが自動で作動することにより、万が一火災の際にも火炎を食い止める機能を果たすこととなる。自動で閉鎖すると言っても、閉鎖するスピードを抑える機構や、障害物を検知すると一度停止するシャッターなど、人が負傷しないような配慮がなされている。


また、観音開き型の防火戸の種類によっては、順位調整器といって扉の閉鎖する順番を正しく機能させる補助具が閉鎖面上部に設けられている場合がある。防火戸は相杓り(あいじゃくり:両扉で重なる部位を作り隙間をなくす構造のこと)構造となっているものが多数あり、その場合扉が閉じても両扉の噛み合わせが悪ければ隙間が生じ、炎と煙の侵入を防ぐ機能が果たせなくなってしまう。それを防ぐために、順位調整器により正しい順番で扉が閉鎖するようになっているのである。


# 点検について

上述のとおり、防火戸は建築基準法を根拠とする防火設備の一種なので、点検するためには一、ニ建築士もしくは防火設備検査員の資格が必要となる。感知器との連動試験を行うために感知器を炙るという消防設備士の業務がそのまま出てくることになるため、消防設備士が兼任することも多いが、資格としては別であることには注意しなければならない。


もし一般的な随時閉鎖型防火戸の点検をする場合、特に注意したほうがよいポイントは以下のとおりである。


①防火戸連動用の感知器が正しい場所に設置されているか

防火戸連動用の感知器は自動火災報知設備の感知器とは別のものが使用されているケースが多い。煙感知器は3種といって感度の低い、誤報が起こりにくいものが採用されている。感知器の下部に赤やピンク色のシールや円が描かれているのがそれである。これが何らかの理由により本来とは別の場所に設置されていたり、別の感知器にすり替わっていないかを確認する。


②閉鎖時に障害となる物品が存置されていないか

一般の方には防火戸は防火戸として認識されていないことが殆どである。施設管理の任を担う方でなければ、それはただの壁として見なされているだろう。そのため、よく防火戸の前に物品が置かれていることがある。当然それでは有事の際に扉が閉鎖しないため、点検結果は不適となる。また、地面の角にコード等を這わせている場合も見られ、これが障害になれば当然良くないのだが、その存在に気づかず連動試験で防火戸を作動させた場合、コードを断線させてしまう恐れもある。防火戸の作動空間には上下隅々まで障害物がないか確認すること。


③連動試験時には安全管理を十分に行う

連動制御器からの操作で実際に連動試験、すなわち感知器の作動により区画内の防火戸が正しく作動するかを確認することになるが、人の通行がある場所で点検を行う場合は要注意である。通行人はドアが閉まるとは少しも考えていないため、点検作業員がしっかりと見張っていないと防火戸の作動空間に容易に進入してくる。点検実施者側の「平気だろう」という認識は通用しないと考えたほうがよい。もし、連動試験を行おうとした際に人の通行の可能性を感じたら、直ちに連動試験をやめ、通行人をまず通してしまったほうが無難である。

④扉の閉まる速さは適正値内か


防火戸の検査項目の中には「閉鎖作動時の運動エネルギーが10J以下であること」という項目がある。要するに、速く閉まると人にぶつかった時あぶないのでゆっくり閉まらなければならない、ということである。規定値か否かは、防火戸の重量と閉鎖に費やした時間から計測することもできるが、プッシュプルゲージがあればそれを使用するのが最も楽である。実際には、ゆっくり動いていると感じるものは問題ないので、明らかに早いと感じるものだけチェックすればよいだろう。


# 防火設備と消防用設備は別

くどいようだが、法律上防火設備と消防用設備は別物である。防火設備も消防用設備も火災の被害を防ぐという目的においては同じような機能をもちながら、法律の要請上は全く違う存在なので、監督官庁が分かれ、各種手続きや規制が異なっている。防火設備は点検の報告先が特定行政庁となっており、その点検資格者も、建築士や防火設備検査資格員となり、消防設備士や消防局とは関係がない。消防局も特定行政庁もお互いの管轄分野には基本的にノータッチであるため、片方だけ点検して終わった気でいると、実は法令違反で調査が入ることにもなりかねない。オーナー等、建物の責任者は、それぞれの資格と知見を有した万全に点検を任せられれる業者の選任をする必要があるだろう。



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