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LIFE(科学的介護情報システム)をいかに活用するか


PDCA

(公開 2022/07/25)

 1. サマリー

科学的介護情報システムLIFEの概要やその使用方法・活用方法などについて解説する。LIFEは介護サービス利用者の状態や、介護施設・事業所で行っているケアの計画・内容などについて蓄積された科学的知見にフィードバックされる情報システムのことである。LIFEを基に科学的な共通指標による判断に基づくPCDAサイクルの確立・ディスカッションの促進・DXなどが期待されている。実際にLIFEをうまく使いこなすためには、「どの業務でどの機能を利用するか」という具体的な手順等を定めておくことが重要である。介護職員の能力の向上・ベテランの経験値のみに頼らない安定的な経営環境の構築などのメリットを享受するために、各介護現場においてもLIFE利活用を進めることが望まれる。

 2. 目次

 3. コンテンツ

# はじめに

介護現場の構造改革の必要性が叫ばれる中、「科学的介護」を推進するためにLIFEが導入された。今回は、LIFEの概要やその活用方法などについて解説する。

# LIFEとは

LIFEとは、Long-term care Information system For Evidenceの略称であり、日本語にすると「科学的介護情報システム」となる。これは元々運用されていたVISIT(リハビリテーションの情報収集システム)およびCHASE(高齢者の状態やケアの内容等の情報収集システム)を統合したものである。 厚生労働省によると、LIFEは「介護サービス利用者の状態や、介護施設・事業所で行っているケアの計画・内容などを一定の様式で入力すると、インターネットを通じて厚生労働省へ送信され、入力内容が分析されて、当該施設等にフィードバックされる情報システム」および「介護事業所においてPDCAサイクルを回すために活用するためのツール」とされている(参照:「科学的介護情報システム(LIFE)による科学的介護の推進について」https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/000949376.pdf)。

そもそもLIFEが推進しようとしている「科学的介護」の定義は、「科学的裏付け(エビデンス)に基づく介護」とされている(同上参照)。具体的には、診察・検査・診断・治療などを経て科学的な根拠(エビデンス)を蓄積し、それを利用して効果的な介護を行う、ということである。LIFEは、このうち「エビデンスの蓄積」に寄与するものである。

# LIFEの使用方法

LIFEの仕様を開始するためには、以下の手順が必要となる(2022年6月17日時点)。

  1. LIFEのサイトを開いて新規利用申請を行う

  2. LIFEを利用するための「起動アイコン」のダウンロード方法やログインID・パスワードなどの必要情報が記載された葉書が厚労省から送付される

  3. データ登録を行う職員のユーザー登録を行う

  4. 介護サービス利用者の登録を行う

  5. 介護サービス利用者ごとのケアや状態に関するデータ登録を行う(介護記録ソフトに記録しているデータを取り込む「CSV取り込みによる登録」と、画面上からの手入力で行う「入力フォームからの登録」の2種類の方法がある)


# LIFE活用について

厚生労働省によると、介護の現場においてLIFEを以下のように活用できる(上記「科学的介護情報システム(LIFE)による科学的介護の推進について」参照)。

  1. 介護業務にPDCAサイクルを組み込み、科学的な共通指標を基に評価・アセスメントを行う

  2. 評価・アセスメントを基にディスカッションを行う

  3. 介護のデジタルトランスフォーメーション(DX)を行う

PCDAのイメージ図

# どのようにLIFEを活用するか

上記はあくまでLIFE活用のイメージなので、実際にLIFEをうまく使いこなすためには、「どの業務でどの機能を利用するか」という具体的な手順等を定めておくことが重要だろう。 たとえば、介護計画書作成の際に過去データを参照する、職員の評価の際の参考として過去データと実際の現場でのデータとの乖離を見る、などといったことが考えられる。

また、「LIFEに合わせて業務自体を改善する」ということもできる。たとえばLIFEに入力しやすいように日々のアセスメント等の書式を改変したり、LIFEに基づいた自立支援計画の策定方法を確立する、といった具合である。そうすることで、より科学的に効果の見込める介護を実施できることが期待できる。


# おわりに

LIFEの目的は、最終的には「介護の現場の経験値のみに頼るのではなく、過去の客観的なデータなどに基づいた計画・ケアの実施・判断を行うことを推進する」ことにある、と言えるだろう。そうすることで、介護職員の能力の向上・ベテランの経験値のみに頼らない安定的な経営環境の構築などの実現が望める。高齢化の進行・働き手の不足が止まらない日本において、LIFEの利活用によるメリットがどれだけ大きいものかは言うまでもない。

LIFEへのデータ入力作業が現場の負担になっている、他の介護システムとの連携が不十分であるなどの課題は見受けられるようである。行政によるシステムそのものの改善が不可欠なのはもちろんだが、長期的な視点で見て上記のようなメリットを享受するために、各介護現場においてもLIFEに少しづつ慣れておいても損はないはずである

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