top of page

積雪時における建物管理の注意点


積雪
積雪

(公開 2023/02/01)

 1.サマリー

冬期の建物施設管理は積雪の対応が一大イベントとなる。積雪に関して事前の対応を怠ると甚大な雪害を引き起こしてしまう。とはいえ、相手は自然のため人力では被害を防ぐことが出来ない規模の積雪も過去には記録されている。

本稿では、過去の被害例と共に、平時での備えがあれば積雪の被害を回避できそうな具体例と事前の準備を解説していく。

積雪や凍結時に効果的な、マットや発熱ヒーター等の融雪システムも併せて紹介する。


 2.目次


 3.コンテンツ

# はじめに

大雪が予想されると、設備管理従事者は雪が降る前に凍結防止剤を撒いたり、雪が建物やその周辺に積もると雪かきを行う。

雪かきはもちろん、雪の影響で設備等に影響がないか各所点検をする。

特に倒壊等の注意が必要なカーポート(屋根だけの簡易車庫)、簡易な建物、老朽化している建物の所有者・管理者は、降雪に備えなければならない。自身が所有・管理する建造物の倒壊みならず、倒壊が引き起こす物理的・心理的な危険は、乗り物や建物、生き物など隣近所へ被害を派生する恐れがあるからである。


図1 体育館屋根崩落状況

# 建物の雪害による被害例

関東甲信地方を中心に平成26年2月に大雪が発生し、体育館、研究所、屋内運動施設等の屋根の崩落や破断、加えカーポートの倒壊被害が起きた。被害の主要因は屋根に積もった雪が雨に変わり、重みの増加で建築物に大きな負担をかけたことにある。

消防庁の報告(平成26年2月14日~16日の大雪による被害状況等について)では死者26名、負傷者701名、住家被害647棟、非住宅被害388棟(公共建物40棟、その他348棟)である。

また、あるスポーツジム利用者が帰宅しようとした際、ビルの上から落下した雪が愛車に直撃して、車の屋根がへこんでいたという事例である。雪害が二次的に派生して被害をもたらした典型例といえる。

これは豪雪地帯の旭川での被害である為、備えるべき雪止め金具や融雪ネットの取り付等を怠っていた被害の可能性もある。


# 積雪時の建物管理の注意点

平成26年2月の記録的な大雪にて各地で建築物の被害が発生した件において、社会資本整備審議会では、建築物被害の現地調査等を実施した。

群馬県、埼玉県、東京都などでは降雪後に降雨になり建築物等が倒壊した。

主な原因として建築物の老朽化に対して十分な維持管理がなされなかった事、想定していた雪下ろしや滑らかな雪による荷重の減少が出来なかった事が予想される。

積雪時の建物管理上でまず重要なのは、積雪時に注意が必要な建物等の把握である。


①緩傾斜の鉄骨構造屋根の建築物

②膜屋根の建築物

③カーポート

④アーケード

⑤老朽化した木造建築物など


まず①だが、屋根の傾斜(勾配)が緩やかなことで積雪し、建築物に雪等の荷重がかかりやすい。

②は、東京ドームの内側から外側に向かって膨らんだような形の構造物である。スタジアムや公共交通機関の駅や空港等で採用されている。やはり重厚な素材の屋根とは違い積雪等の重みには弱い。

③は説明済みで、④は商店街や商業施設等で採用されている屋根で、アクリル等が使われているため荷重に弱い。

⑤は説明の必要はないと思われる。


そこで次は、特に注意する必要がある警戒度「A」の積雪状況を挙げる。


①大雪後に降雨がある

②30㎝以上(地域差有り)の積雪がある


①は前述の平成26年2月の大雪被害の原因の一つである。雪が雨水を含めばその荷重は深刻である。

②は、例えば川崎市内の建築物は30㎝の積雪荷重に耐え得るように設計されている(川崎市建築基準法施行細則第14条の2)といわれている。よって建物管理者は各地域の耐積雪の基準を把握することが賢明である。

また、地域の地方気象台の気象情報をまめに収集して今後の予報への対応を早急に取ることが重要で、雪害を最小限にできる。


# 雪害被害を防ぐには

冬期間における施設管理で負担が大きいのは雪害対応である。普段からの備えも含め、雪による被害を防ぐにはどうするかを考察する。


・外部の歩道、スロープ、階段等

普段から凍結するような通路は、積雪があったら危険である。平時よりそういった場所の把握に努め、雪が降りそうであれば早めに融雪剤を散布しておくことが大切である。また漏水等の関係で水溜りができる地点の把握と修繕も被害防止には重要となる。あまりにも積雪が目立ち、転倒者や怪我人が過去に多く発生している場所は、路面を加熱するロードヒーター、特殊なゴム素材が融雪を促す融雪マット等の設置も考慮する。


図2 融雪マット

・屋上やひさし、窓の周辺

屋上やひさしは雪が積もりやすく荷重にも注意が必要な箇所である。積雪の被害が懸念される箇所には融雪効果の高い発熱ヒーターの設置も検討する。


・設備機器類の雪による埋没等

建物の屋上及び周辺にはエアコンの室外機等の機器が設置されている。これらの機器自体や周辺の雪かきも大切である。特に風の吹き出し口が天を向いた上吹きタイプの室外機は、吹き出し口に積雪して熱交換が十分に行われず、部屋が温まらないといったクレームに発展する。また前吹きタイプでも雪に全面を覆われる可能性がある為、普段から各タイプの把握・記録に努める。


図3 屋外機の埋没

・非常時の避難経路等の確保

大雪の最中、火災や地震が起きないとは限らない。その際の避難経路の確保が重要である。避難経路や出入口の状況、特に外開きの扉は積雪があれば内側からでは開かない可能性があり、平時から問題箇所の把握に努め、積雪を防ぐ準備も必要である。


図4 出入口前の積雪

・屋外の露出物や落下する危険物の排除

屋外に露出している配管や配線等は雪の重みにより破断すると、建物環境の維持に支障をきたす。また樹木の枝が積雪の重みで折れて落下し、地上の建築物や室外機、キュービクル、冷却塔等の機器に直撃して破損してしまう事例もある。平時から屋外におけるリスクの現状を把握し、配線・配管等はカバーで防護し、折れそうな枝は伐採したり事前の処置をする。


# まとめ

積雪時の被害は積雪そのものに留まらない。積雪が起きた状況ではできることは限られ、無理して動くのは危険である。積雪時のリスクを平時より想定し、安心安全な状況でしっかりと備えておくことが賢明である。


参考

・消防庁「平成26年2月14日~16日の大雪による被害状況等について」https://www.fdma.go.jp/disaster/info/assets/post738.pdf

・大雪時における建築物の被害防止について

・【身近なお悩み法律相談】

0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page