top of page

電気主任技術者の業務及びその周辺電気関連業の今後の展望


電気 点検
電気設備の点検

(公開 2022/10/17)

 1.サマリー

電気主任技術者業務を取り巻く環境はIT導入をはじめ、様々な変革を求められている。

一方で、太陽光発電設備や風力発電設備など、今までは需要家側の業務だった電気主任技術者業務が発電や系統連系など、今まで以上に高度化が進み、点検以外にも様々な検討を行う必要性が出てきている。

そんな電気主任技術者業務の現状と今後の展望、課題について解説を行う。


 2.目次

 3.コンテンツ

# 電気主任技術者業務の現状

電気主任技術者の配置は電気事業法によって定められているため、多くの電気設備において必ず必要となる。高圧受電設備においては、需要家ごとに電気主任技術者の選任が必要となり、電気保安協会などの電気保安法人への委託等も含めた対応が必要だ。

現在、工場設備などにおける電気主任技術者業務は所属している電気技術者等が電気主任技術者資格を活用して設計等と兼任している場合が多い。


管理業務の外部委託に関しても電気設備が生産設備ではない間接部門による扱いとなるため、委託費がコストとなってしまい、投資と考える経営者が少ないことが現状だ。

太陽光などに代表される再生可能エネルギーによる発電所においても電気主任技術者の選任は、電気事業法による一定規模の発電所であれば必要だ。

こうした法的な拘束力による電気主任技術者の選任が必要なため、電気主任技術者の需要は年々増加している。

その一方で、「あまり電気主任技術者による電気設備の管理業務に費用はかけたくない」という考えを持つ経営者も少なくない。


この部分にどうバランスをとり、法的に問題がなく、かつ安価に電気事故を発生させない安全な電気管理体制を実現できるかが大きな課題となってきている。

また、ビルメンテナンスにおける電気主任技術者業務の割合は1割程度で給排水設備や空調設備など建物の様々な設備のメンテナンスと並行しておこなっているため、電気主任技術者も電気主任技術者業務に専念するという形での就労が年々少なくなってきているのが現状だ。

# IT、DX技術による点検業務の効率化

人手不足や有資格者の取り合いなどにより、高圧受電設備や発電所の電気主任技術者の選任ができないという状況に陥ってしまうことは電気事業法管轄の経済産業省も危惧していると言える。

実際に電気主任技術者試験の合格率は10%程度ということもあり、中程度の難関資格となるため取得人口も比例して少なくなる。再生可能エネルギーの発電所の増加が、電気主任技術者業務をさらに効率化しなければならない背景になると言える。

電気主任技術者の不足に関しては経済産業省をはじめ様々なシンクタンクのレポートなどでも警鐘を鳴らしている。


ここで、経済産業省は今までの電気主任技術者の選任制を統括制への切り替えを推進することで、一人の電気主任技術者で受け持つことができる設備件数の増加を検討している。

そのような統括制となった電気主任技術者業務において、遠隔での監視ができ、非常時には駆け付けができる体制をとる必要がある。


ITやDXなどの技術を駆使して各保守拠点の保守要員に的確な指示を出すことができるようになる必要がある。保守拠点に常駐する保守要員は電気主任技術者資格がなくても対応ができる体制ができるのが統括制だ。そのため、非常時や事故時には、統括する電気主任技術者の技術力や的確な指示が出されていたのかが問題となる可能性もある。

# 今後の電気主任技術者業務における課題と展望

より高度な技術を用いて遠隔監視を行いながら、日々の点検業務の効率化を求められている電気主任技術者業務だが、関連する給排水設備や空調設備など様々な関連設備への対応なども求められるようになっていくと考えられる。


電気主任技術者業務自体がビルメンテナンス業務の一部という見られ方をされることが多いため、専業で行っている電気保安法人などを除くと、より少ない人員で点検業務を行う必要性が出てくると考えられる。


人手不足の影響により少人数で業務にあたることでコスト削減が可能となるが、経営側からはコストと見られている状況もあり、さらなるコスト削減を求められる可能性がある。その場合、より付加価値の高い電気主任技術者業務やビルメンテナンスサービスの提供などで顧客やオーナーでもある経営者からより高い委託費を獲得する、高い評価を得る、と言った必要が業務の中で出てくるだろう。


# まとめ

電気技術者が希少であった時代は、電気主任技術者資格を取得すれば、名義貸しや定年後の不労所得のようなイメージが強く、実際にそういった仕事の仕方をしていた人も存在していた。


しかし、時代が変わって電気技術者が多く世の中にいる状態では電気設備のオーナーである経営者など電気保安業務やビルメンテナンス業務に費用を払う側も他と比較して安い方を選ぶということが可能な時代となった。

そのような状態となった場合、今までと同じ業務を行っていては革新的なことを行う法人や個人に仕事を奪われてしまうと思われる。


現状でできることや今後の法改正、最新技術などを把握し、業務の効率化や業務に対する付加価値の向上などに努める必要があると言えるだろう。

参考

電気主任技術者制度における統括行為の要件明確化に関する「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」の一部改正について


関連

コンテンツ「電気工事と電気通信工事にかかわる資格の違い」


コンテンツ「第三種電気主任技術者の資格では、どのようなことができるのか」


0件のコメント
bottom of page