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ニュース「防災士、20万人を突破 若年層増加、「取りっぱなし」が課題」


(公開 2021/02/18)

情報:中日新聞「防災士、20万人を突破 若年層増加、「取りっぱなし」が課題」


 1. サマリー

防災士の資格取得者数が累計20万人を突破した。しかし、資格を活かせないケースが多いようである。防災士は災害大国日本を守るため、市民レベルでの防災力の底上げを期待して作られた資格であるが、実態としてはあまり効果的に機能していない。本当に必要な防災力は資格に頼るのではなく、消防法に基づく防火防災管理を適切に履行することや、実行力のあるBCPを策定し、実績を残すことで得られるのである。


 2. 目次


 3. コンテンツ

# ニュース概要

災害時の避難や救助などについて知識と技能を持つと言われる民間資格「防災士」の累計資格者数が二十万人を超えたことが分かった。東日本大震災以後、防災に対する意識が高まったことや、資格の取得費用を助成する自治体が増えたことが要因。ただ、資格を生かせていないケースも見られ、活用が課題となっている。


# 防災士について

防災士は、災害大国日本において、日本を守るという大義名分のもと作られた資格であった。しかし、本報道を見る限り、少しでも災害の知識を持った市民を増やすという目標が先行しすぎ、資格取得後の具体的なスキルアップや実生活に役立つ能力の開発などが伴っていないようである。


これはあらゆる資格について言えることだが、資格の取得イコール実務能力の獲得とはならない。説明書を読んだからと言って電子オルガンから素晴らしい音楽を奏でられるわけではないように、実務能力は現場の経験や技術が要求されるものである。防災士に関して言えば、災害の実務は日常的に求められる性格のものではないというのも一つの要因ではある。しかし、何より防災士の資格は、講習を受講することで取得でき(一応修了考査はあるが)、かつその内容が資格者と無資格者を隔てられるような、専門的な内容ではないことが、一部から役に立たない資格と言われてしまう最大の原因であろう。資格取得者から聞いた情報では、講習内容はどれもインターネットを検索すれば知ることができる範囲で、各自治体や日本赤十字社がより安価に講習を実施している箇所も多い。現実的なところ、防災士の意義は「防災士をまったく知らない人に名乗ると、何となくそれっぽく見える」という点に集約されてしまうのではないか。これについては、防災用品を取り扱うメーカーや販売店舗に勤める人であれば、取得することで何かしらの効果が得られるかもしれない。


# 建物の防火防災をアピールするならば

もし、建物の管理者等で防災の能力を内外にアピールしたいと考える方がいるのであれば、資格の取得にとどまらず建物の防火防災対策にそれを生かすよう日々力を注ぐことが重要であろう。建物の防火防災対策に力を注いだほうが良いであろう。具体的には、罰則規定のある消防法違反を行わないことや、確実なBCPを策定することである。有事の際にそれらの取り組みの効果をもたらすことができれば、災害に強い建物、会社として実績を強調することができる。また、一定規模以上の建物では防火対象物点検及び防災管理点検を行う必要があるが、その点検を3年指摘事項なしでパスすると防災優良認定証パネルを建物の目に付く場所に掲示することができる(詳細はコンテンツ「防火対象物点検とは」を参照)。こちらは消防法に根ざした立派な認定項目であるためアピール効果は高く、それに加え、定期点検費用の削減という別の効果も得られるため、点検対象物件ならば是非とも活用したほうがよいであろう。


参考:

田中純一『防災士の社会的役割と課題に関する一考察』北陸学院大学



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