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介護現場における見守りシステムの意義


介護 見守り カメラ
介護現場における見守り

(公開 2022/09/20)

 1. サマリー

介護現場における見守り業務改善を期待できる見守りシステムについて解説する。まず見守り業務・見守りシステムについて概観し、見守りシステムの種類について解説する。利用者・介護者側にとってメリットがあるだけにとどまらず、見守りシステムによるデータの利活用によって介護業界全体を発展させることも可能である。介護現場にとっての見守りシステムのメリットは小さくないはずである。


 2. 目次


 3. コンテンツ

# はじめに

高齢化の進行、介護人材の不足などにより介護負担も増大の一途を辿る中、最も負担の重い業務のひとつである見守り業務の見直しは喫緊の課題と言える。今回は、見守り業務負担をICTの力で低減させる方法の一環として、介護現場における見守りシステムについて解説する。 まず見守り業務の概要を確認し、介護見守りシステムの概要・種類を確認する。最後にその活用方法について触れる。


# 介護における見守り業務とは

介護現場において使用される「見守り」という業務に明確な定義は存在しない。例としては、利用者が1人で起立できるかや歩行中に転倒しないか注意したり、食事中に誤嚥しないか見張ったりすることなどが挙げられる。おおよそ、「利用者が安心かつ安全な生活を送れているかに注意を払い、異常がある場合には適切な措置が行えるようにすること」、と考えて差し支えないだろう。

(参照: 北九州市 介護ロボットマスター育成講習について

このように、「見守り業務」は曖昧な意味合いで使われがちであるが、今回は特に夜間の利用者の就寝中に、

  • 利用者が危険な状態にあることを検知すること

  • 利用者が危険な状態になるのを未然に防ぐこと

を目的とする業務として「見守り業務」を定義したい。特に就寝中は不慮の事態の発生率が高く、介護者の肉体的・精神的負担も増すタイミングと言える。


# 介護見守りシステムとは

介護現場の見守り業務を支援する手段として、見守りシステムが注目されている。たとえば厚生労働省は、このようなシステムについて、以下のような条件を満たすものと定義している。

  • 複数の要介護者を同時に見守ることが可能。 

  • 施設内各所にいる複数の介護従事者へ同時に情報共有することが可能。

  • 昼夜問わず使用できる。

  • 要介護者が自発的に助けを求める行動 (ボタンを押す、声を出す等)から得る情報だけに依存しない。

  • 要介護者がベッドから離れようとしている状態又は離れたことを検知し、介護従事者へ通報できる。

  • 認知症の方の見守りプラットフォームとして、機能の拡張又は他の機器・ソフトウェアと接続ができる。


# 介護見守りシステムの種類

従来はマットや赤外線などのセンサーで利用者の動きを検知し報知するだけのタイプの機器が主流だったが、近年ではロボット技術・AI技術などの進展により以下のような種類のものが注目されている。また、見守りシステムが異常を検知した際の報知先も、従来は報知器による報知、専用端末での報知、ナースコール中継器など専門のものが主だっていたが、以下のような種類のシステムでは、WiFi あるいは携帯通信網などを通じて、汎用のタブレットやスマートフォンなどに報知を送ることができる。


1. 人感検知システム 温度や熱に反応するセンサーによって、離れたところからでも利用者の動きを検知 できるシステムである。起き上がり、ベッドからのはみ出しなど対象者の多様な動きをセンサーで感知し、報知することができる。このタイプは利用者に存在を気づかれにくく、また断線などの故障リスクが少ない点がメリットである。

例: 株式会社平和テクノシステム


2. バイタルサイン検知システム バイタルサイン(体動・心拍・呼吸)を検出するセンサーを利用者のマットレスの上下どちらかに設置し、対象者のバイタルサインを検出しなくなる、もしくは異常を検出すると報知するシステムである。このタイプのメリットとしては、直接肌に触れないので利用者の違和感が少なく済むこと・生体信号をリアルタイムで受け取れるため認識できる異常の幅が広いことが挙げられる。

例: 株式会社ミオ・コーポレーション


3. シルエットセンサー

利用者の姿勢などを検知するタイプのシステムである。このタイプは、センサーで特定の姿勢を検知するタイプ、および、AIによって危険な姿勢を判定するタイプに大別される。

例: キング通信工業株式会社


# 介護見守りシステムの意義

以上のような介護見守りシステムを導入することによって、以下のようなことが期待できる。

  • 介護サービスの質向上(自立支援・生活支援など)

  • 利用者の生活の質の向上

  • 利用者およびその家族の満足度向上

  • 介護業務負担の軽減

  • 労働環境の改善

  • データの有効活用

  • 介護人材の育成

総じて、介護見守りシステムは多方面に利益をもたらすものといえる。サービス・安全性向上というメリットを利用者が享受できるのはもちろん、介護者側にとっても、業務そのものの改善につながる。それだけにとどまらず、見守りシステムによって、データ・ノウハウを蓄積・活用することで介護業界全体を発展させることも可能である。

もちろん導入の際の手間や学習コストなどの負担はあるが、介護現場にとっての見守りシステムのメリットは小さくないはずである。


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